長年、日本人のアイデンティティー喪失を心配してきました。いま日本社会が抱えるさまざまな難問の陰にこの問題がちらつきます。強い個人は強い文化的背景に支えられてはじめて成立すること、新時代創造の道は伝統の洗練以外にあり得ないことを、日本人ほど忘れている民族はほかに見当たりません。自分を見失った日本という社会が右往左往しています。
いま私たちに必要なことは、より上手に真似をすることでも、闇雲に「変わる」ことでもありません。自らの伝統に学び、しっかりと自分を同定することだと思います。
そして、日本の文化的、社会的伝統の真髄が「自然とともに生きる」ことだということを思い出せば、そこに学ぶことこそ、最も今日的な世界的課題に答えるための有力な手立てだということに気づきます。
二十世紀は傲慢な世紀でした。人の力は自然に勝る、より良いものはより新しいもの、という二つのドグマに支配されていました。新世紀は謙虚な時代でなければなりません。清らかな生命を取り戻すために、自然から学び、伝統の英知から学ぶ必要があります。
環境循環、自然順応という日本文化の精神に学び、その有形無形の財産をいまの生活に生かす。日本生活文化の再生は、地球環境再生の道であり、同時に、世界に貢献する日本の出発点として、私たち日本人に自信と希望を取り戻す最良の機会となるに違いありません。
最終更新日 : 平成十五年二月二十日